解ける螺旋
確かに、愁夜さん自身が始めた事だ。
だけど幾つもの私の世界を繰り返して来た愁夜さんは、あまりに孤独過ぎる。


もう終わらせてあげたい。
そんな孤独から救い出してあげたい。
もし愁夜さんの目的を知る事が出来るなら、『私』が叶えてあげる事も出来るかもしれない。


だから私は意を決して口を開いた。


「……健太郎、私ね、前に見た事があるの。
先生がパソコンで作成してたフローチャート」


決心しながらも、まだ迷いを断ち切れないままで、私は歩道に目を落とした。


「フローチャート……?」


健太郎の声が微妙に揺らぐ。


「ほら、私達もいくつもの仮定を分岐させて、導かれる結果を図に示す時に作るでしょ?
連絡網みたいなヤツ。
油断してたのかもしれないけど、先生が前に研究室ですごく熱心に作ってた。
……こうして考えてみると、あれは先生が実際に体験して来た、私の多世界の結末までの過程なんじゃないかな。
だからね、あれを見る事が出来たら、先生の目的もわかるんじゃないかな」

「……それを奈月はどうやって見るつもり?」


話は理解してるんだろうけど、健太郎は大きく溜め息をついた。


「先生は論文も研究資料も全部フラッシュメモリに保存してて、いつも持ち歩いてるよ」

「知ってる。だから、これから先生の所に行く」

「バカか!?
……先生は俺達が何か気付いてる事位もうわかってるんだ。
奈月を目の前にして、警戒しない訳がない。
下手したら会った途端に殺されるかもしれないんだぞ?
なのにわざわざ危険な真似させる訳にいかない」


健太郎の言葉はもっともだったけど、私も考えがある以上は引く事が出来ない。
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