解ける螺旋
多分。
確証はないけれど、なんとなく。
愁夜さんはまだ、私を殺す事が出来ないんじゃないかと思った。


「……大丈夫。私に考えがあるんだ。
もしかしたら、私の考えが当たってるかもしれない。
それが確認出来たら、上手く行くかもしれない」

「全部『かもしれない』じゃないか。
失敗したらどうするんだよ」

「そしたらきっと、先生はまた他の世界に行くよ」

「簡単に言うなよ! それで俺は、また奈月を失うのか!?
失って、俺だけが生きて行くのか?」

「……」


健太郎の悲痛な声に心を揺さぶられて、一瞬だけ決意が揺らぎそうになった。


『また』私を失う。


今の健太郎が実際に私を失った訳じゃないのに、まるで本当に健太郎が体験して来たみたいだった。
ずっと一人で調べて来てくれた健太郎は、私の想像以上に記憶が乱されているのかもしれない。
それが私のせいだと思うと、やっぱり苦しくて仕方ない。


「……そうならない方法を探すの。
だから健太郎、私を信じて」


泣きそうになりながら呟くと、健太郎はグッと目を閉じて空を仰いだ。
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