解ける螺旋
一瞬足から力が抜けてその場に座り込むと、あっさりとセーターを脱がされた。
その上逃げようとする私の腰に手を回して、スカートのファスナーを下ろすと簡単に床に落とされる。


「やっ……!!」


あまりにも心許ない下着姿にされて、さすがに羞恥で身体を必死に隠した。
そんな私を、愁夜さんは本当に面白そうに笑って見ている。


「期待させたら悪かったけど、今日はそんな気分じゃないから。
服は乾かしておくよ。
後はそのままでいてもいいし、ベッドに入っててもいいし、リビングでコート着ててもいい」

「……なんでそんなに悪趣味なんですか」


もう恥ずかしさも忘れる位呆れてしまう。
嫌みを籠めて言ったつもりの言葉だったのに、愁夜さんは首だけ私に振り向けると、ニッコリと満面の笑みを浮かべた。


「強いて言えばお仕置きかな。
どれだけ痛い目に遭えば心を入れ替えるのか。
奈月の周りの男がみんな結城みたいに安全だと思うなって事」

「……」


愁夜さんを前にして安心だなんて思った事はない。
だけど多分何を言っても無駄だと思ったから、私は溜め息をついた。
愁夜さんはまだ笑いながら私の服を持って浴室に向かって行く。
しばらくすると乾燥機が回る音が聞こえて来た。


とは言え、さすがにこんな恰好で愁夜さんと寝室にいるなんて心臓が保たない。
リビングで一人になったりしたら、ここに来た目的が何も果たせずに終わってしまう。


結局こんな恰好で部屋に上がり込んだ事が既に間違いだったんだ。
今日愁夜さんを探るのは諦めるしかないと、溜め息をついた。
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