解ける螺旋
その時。
浴室に行っていた愁夜さんが寝室に戻って来た。
とりあえず身体を隠してリビングに脱出しようと考えた時、ふわっと身体が柔らかい物に覆われた。


「……!?」


一瞬身体を強張らせて、だけど直ぐにその正体を確認して顔を上げる。
私の身体を覆っていたのは柔らかい大きな毛布で、すっぽりと身体を包み込んでくれてとても温かい。


「あ……」

「よほど理由があって来たんじゃないの?
話したいの? 聞きたいの? どっち?」


愁夜さんが私の目線に合わせる様にしゃがみ込んだ。
そしてジッと私の目を覗き込んで来る。


「……何しに来た?」

「……」


さっきまでのふざけた態度とは違う。
油断していたつもりはなくても愁夜さんのペースに巻き込まれて、完全に乱されていた事に気付く。
さっきとは違う鼓動で、心臓が怖い位速く打っている。
早くペースを取り戻さないと、結局私はここまで来て何も出来ずに終わってしまう。


「何しに来たの」


愁夜さんが同じセリフを繰り返して、私の顎をグッと掴んだ。


「っ……」


強引に顔を持ち上げられて、その力の強さに不覚にも涙が滲んだ。


「俺との関係を結城に暴かれて、俺の妹の事を聞き出して一緒に探って。
その上で奈月はここに居る。
それはそれで覚悟して来たって事だよね。
……奈月。君は何を確かめに来たの」
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