解ける螺旋
なんとか真っ直ぐ愁夜さんの瞳を見つめ返す。
どう考えても脅しているのは愁夜さんの方なのに、やっぱりその瞳は揺らいでいる。
私が何を知ったか、何を知りたいのか。
本当に聞きたいのは、愁夜さんなんだと感じる。
「……愁夜さん。気付いてますか。
こうやって私に近付く度に、触れる度に。
私の中に別の記憶が流れ込むのを」
「……」
愁夜さんの眉が少しだけ寄せられた。
何も言わないからその答えはわからない。
だけど、今はただ、私の言葉を待っている事がわかる。
「ちょっと前から……。私にはありえない記憶が生まれ始めていたんです。
自分自身が経験したはずの無い記憶。……殺される夢。
自分だけの身に起きている事かと思ったら、健太郎も同じ様に記憶が乱れていて。
私も健太郎も、自分の気持ちさえわからなくなって来てたんです」
愁夜さんは黙っている。
それは愁夜さんにもわかっていた事なのか。
それとも本当に何も気付いていなかったのか。
そのポーカーフェイスからは、何も見出せないけれど。
――気付かない訳がない。
気付いていなかったのなら、私にあんな風に近付いたり乱暴な事をしたりして、健太郎と私を引き裂く様な真似はしなかったはずだから。
「健太郎と話をして、私達に何が起きているかを確認しました。
健太郎が起こり得る可能性を推論してくれました。
……私達の記憶の混濁は、愁夜さんと出会ってから起きた事だって結論を出したんです。
健太郎は愁夜さんがなんらかの方法で時空を跳躍する技術を身に付けて、私の世界に干渉しているって仮説を立てました。
ありえない事が起きているって前提で考えないと、私達の身に起きている現象の説明が出来ないから、って。
……愁夜さんは私の多世界を幾つも幾つも観測し続けて。
自分の望む未来を創り上げようとして来た。
その過程で体験した他の世界の記憶が、こうして接点を持つ様になった私達に影響を与えて、記憶に錯誤が現れ始めた」
私が言葉を切ると、愁夜さんは私をジッと見つめたままで黙り込んだ。
どう考えても脅しているのは愁夜さんの方なのに、やっぱりその瞳は揺らいでいる。
私が何を知ったか、何を知りたいのか。
本当に聞きたいのは、愁夜さんなんだと感じる。
「……愁夜さん。気付いてますか。
こうやって私に近付く度に、触れる度に。
私の中に別の記憶が流れ込むのを」
「……」
愁夜さんの眉が少しだけ寄せられた。
何も言わないからその答えはわからない。
だけど、今はただ、私の言葉を待っている事がわかる。
「ちょっと前から……。私にはありえない記憶が生まれ始めていたんです。
自分自身が経験したはずの無い記憶。……殺される夢。
自分だけの身に起きている事かと思ったら、健太郎も同じ様に記憶が乱れていて。
私も健太郎も、自分の気持ちさえわからなくなって来てたんです」
愁夜さんは黙っている。
それは愁夜さんにもわかっていた事なのか。
それとも本当に何も気付いていなかったのか。
そのポーカーフェイスからは、何も見出せないけれど。
――気付かない訳がない。
気付いていなかったのなら、私にあんな風に近付いたり乱暴な事をしたりして、健太郎と私を引き裂く様な真似はしなかったはずだから。
「健太郎と話をして、私達に何が起きているかを確認しました。
健太郎が起こり得る可能性を推論してくれました。
……私達の記憶の混濁は、愁夜さんと出会ってから起きた事だって結論を出したんです。
健太郎は愁夜さんがなんらかの方法で時空を跳躍する技術を身に付けて、私の世界に干渉しているって仮説を立てました。
ありえない事が起きているって前提で考えないと、私達の身に起きている現象の説明が出来ないから、って。
……愁夜さんは私の多世界を幾つも幾つも観測し続けて。
自分の望む未来を創り上げようとして来た。
その過程で体験した他の世界の記憶が、こうして接点を持つ様になった私達に影響を与えて、記憶に錯誤が現れ始めた」
私が言葉を切ると、愁夜さんは私をジッと見つめたままで黙り込んだ。