解ける螺旋
普通なら、そんな穏やかな反応をするはずがない。


気が触れたんじゃないか、って、笑い飛ばされても仕方ないって思うのに。
時空跳躍なんて、多世界なんて、何を夢みたいな事って。
科学に携わる愁夜さんなら、笑い飛ばせなければいけないはずなのに。


真剣な目をしているからこそ、健太郎の夢みたいな話を愁夜さんが認めている事を知ってしまう。
今目の前に居る愁夜さんが、本当にこの世界には存在しえない人なんだって確信してしまう。


愁夜さんはフッと笑うと、短い言葉で私にとどめを刺す。


「……まさか俺自身が関わったせいで、君達がお互いを意識する様になるなんてね。
皮肉なもんだ」


その一言で、頭の中で何かが崩壊した。
ありえないと思っていた前提が認められてしまった今、私は愁夜さんの目的を聞き出さなければいけない。
なのに口にしながらも、私自身がまだ信じられずに迷走してるような気分だった。
それでも口だけは真実を求めて言葉を紡ぐ。


「……愁夜さん。
あなたの目的は、妹さんの……西谷真美さんの命を救う事だったんですよね？
私が知らない最初の世界では、真美さんは助からなかった。
愁夜さん自身の記憶の中で、真美さんは病気で亡くなったんでしょう？
だけどあなたは、真美さんを救う事が出来たかもしれない何かを見つけた。
もしも真美さんが生きているうちに見つけ出す事が出来たなら。
そう考えたから、今こんな事が起きているんでしょう……？」


私が必死に心を落ち着けてゆっくり話すと、愁夜さんは私の顔から手を離して、その場に力が抜けた様に腰を下ろした。
微妙に私から逸らされた瞳が、隠す事も出来ない苦痛を表している。
それを見て私はもう一つの疑問の答えも確信していた。
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