解ける螺旋
「まあ当然、上手く行くとは思ってなかったからいいけどね。
どうせこの世界も失敗なら、出来るだけ情報を集めてからまた跳ぶだけだ。
次に出会う君なら、きっと結城への想いなど思い出す事なく、俺の物に出来る。
……そうしたら、もう君を殺す必要もない、」

「……」


愁夜さんの自虐的な笑みに、私は黙り込んだ。


わかっていたけど、やっぱり私の事なんて、好きでもなんでもなかったんだ。
健太郎への想いを心に宿した私に用はないんだ。
そして私を殺して、他の世界の私に近付くんだ。


――全部、真美さんが健太郎と恋をする未来の為だけに。


真美さんの為だけになら、ロマンチックで優しいお兄さんでしかないけれど。
結局私は切り捨てられるんだ。


ここに来る前に予想はしていた事だけど、愁夜さんの口から言われた言葉に、想像以上の痛みを感じた。
だけど辛そうな愁夜さんの表情が私を惑わせる。
割り切っていると言ったのは愁夜さんなのに、どうしてこんなに苦しそうな表情を見せるのか。
だから私だって、愁夜さんを憎めない。
酷い人だって思う事が出来ない。


もしかしたらもう、愁夜さん自身にもわからないのかもしれない。
真美さんの幸せの為。
ただそれだけの為に今も動いているのか。
これから先もこんな事を続けるのか。
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