解ける螺旋
私は涙が頬を伝うのも気にせずに、愁夜さんを真っ直ぐ見つめた。


「俺の幸せなんかどうでもいい。
……いや、真美が幸せに生きているって事が俺の幸せなのかな。
生きていても辛い事ばかりだったんだ。
少しは幸せを手に入れる事が出来てもいいじゃないか。
……でも。別の世界の人間があまり長く接するのはリスクが高い事はわかったから。
またやり方を考える。
後少しなんだ。ここまで来たら止めるなんて出来ない。
……ここで止めたら、今まで俺は何の為に」


強い決意の言葉なのに、どこかに迷う色を感じるのはどうしてだろう。
そう思ったら、いつも揺れていた愁夜さんの瞳の光を思い出した。


本当はとても優しい人だから。
妹の幸せの為だけに、自分の孤独を選ぶ事が出来る人だから。
求めれば求める程、願った未来の形が変わって、愁夜さんの葛藤も大きくなっていったはずだと思う。


本当は人の命を奪うなんて出来る人じゃない。
だけどせざるを得なかった。


どれだけ苦しんだんだろう。
私を殺し続ける事に。私を傷付ける事に。健太郎を混乱させる事に。


そんな事を平気な顔で出来る人じゃないんだから。


「……愁夜さん」


無意識に名前を呼んだ。
何を言おうと思ったのかは自分でもわからない。
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