解ける螺旋
――まさかとは思うけど。


「……西谷さんの気持ち、気付いてた?」


そうじゃなかったらバラした事になっちゃうな、と思いながら、恐る恐るそう言った。
私の言葉に一瞬詰まった後で、健太郎は、ああ、とか、うう、とか、はっきりしない声を出す。


「……健太郎、はっきり言いなさい」

「……気付いてはいなかったんだけど。
俺だって言われればわかるし」


ボソボソと喋る健太郎の声は聞き取り辛いけど。


「は? ……ええっ!?」


肝心なところははっきり聞こえてしまう私は、結構耳聡いのかもしれない。


「な……、声デカい!」


健太郎が真っ赤な顔で私の口を塞いだ。
それを必死に振り払うと、あ、ごめんと短く呟いて、健太郎は私から手を離した。


「西谷さんに言われたの!?」


驚きのままに身を乗り出すと、健太郎は照れ隠しに不機嫌な顔をして、そっぽを向いてしまう。


「だ、だから。声デカいって……」

「自分で言ったくせに、照れないでよ」

「う……」


健太郎は何か言いかけては口を閉じて、閉じてはまた何か言い掛ける。
こんなしどろもどろの健太郎は新しい。
それをただじっと見ていると、健太郎は観念した様に溜め息をついた。
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