解ける螺旋



それ以上は何も突っ込まなかったのに健太郎は物凄く照れていて、目指す家に着くまで仏頂面で何も話そうとしなかった。
そして着いたのは質素なアパート。
健太郎は部屋の番号を確認してから階段を昇って、二階の一室のドアをノックした。


「……西谷さん、俺。……居る?」


どことなく優しく聞こえる健太郎の声。
横顔が少し赤くなってるのに気付きながら、私は突つきたくなる気持ちを必死に抑えた。


芽生えるかもしれない『恋』
デリケートな問題だから、茶化すなんて出来ない。


はい、と室内から声がして、ドアが開かれた。
姿を見せた西谷さんの笑顔が綻ぶ。


「結城さん! ……来てくれたんですか。
相沢さんも……!」

「こんにちは。……良かった、元気そう」


私も少し緊張しながらそう挨拶すると、西谷さんは曇りのない笑顔を見せてくれた。
そしてそれを見守る健太郎の表情を見て、私は確かめるまでもなく確信していた。


健太郎も西谷さんに惹かれてる。
それを私がどんなに喜んでいるのかを知られる訳にいかなくて、黙っている事に罪悪感を感じたりもする。


だけど……。
健太郎が本当に西谷さんを好きになるなら、私も心から応援したい。
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