解ける螺旋

そう思って切ない気持ちになった時。
部屋のドアが開いた音がした。


「ただいま～。
ごめん、真美、遅くなった！」


ちょっと陽気な低い声が玄関から聞こえて、私は反射的に身体を強張らせた。


「あ、お兄ちゃん！　もう、遅いよ！！」


西谷さんはすごく嬉しそうな顔をして、病人とは思えない位元気に玄関に向かって行く。
その背中を見送りながら、私も健太郎も微妙に緊張しながら視線を交わした。


「お兄ちゃん！
結城さんと相沢さん、いらしてるのよ。ほら、早く！！」

「ご、ごめん。アイツあんまり煩いからさ……」


玄関での二人のやり取りが聞こえて来る。
そしてバタバタと走って来る足音。


「す、すみません！
初めまして、西谷愁夜です！」


部屋に飛び込んで来るなり、彼はそう言った。
その姿を私は想像していたはずなのに、声を上げてしまう。


「……愁夜さん……！」

「は？　え？」


私の呼び掛けた声に首を傾げた後、『西谷愁夜』さんはすぐ気を取り直して私に笑顔を向けた。


「相沢先生のお嬢さん、ですよね。
……すみません。本当に俺、何度もお礼に行きたいって思ってたんですけど。
ここで会えて嬉しいです」