解ける螺旋
そして私の身体を自分から引き剥がすと、本当に驚いた顔をして私を凝視して来る。


「やっぱりおかしくなっちゃった?」

「おかしくなんかない」

「……いや、普通そうは来ないだろ」


愁夜さんは戸惑ってる。
無意識かもしれないけど、言葉を飲み込んで口を手で押さえる仕草が、ちょっと意外で嬉しくなった。


好かれてはいないかもしれないけど、嫌われてもいない。
そう思ったら、自然と笑みも零れる。


「でも、好きになっちゃったんだから仕方ないですよね」

「……」


顔を覗き込むと目を逸らされた。
それでも視線を追って目を合わせると、愁夜さんは大きく溜め息をついた。


「……可哀想に。それじゃあ失恋は確定だね」


あっさりと言われて、私は唇を噛み締めた。
そりゃ好かれてなくても、可能性もないなんて思いたくないのに。


「どうして?
私だって今好かれてるとは思ってないけど、でも……」

「この先はわからないって言いたい?
前向きで微笑ましいけど、俺はこの先の自分がどうなるかもわからないから。
……忘れてるなら思い出して。
俺はこの世界に留まれない。
一時的にこの世界にいたとしても、俺が生きる世界はこの五年後の世界だから」

「……あ」


愁夜さんに指摘されて、現実を思い出した。
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