解ける螺旋
わかってた事なのに、どうして考えなかったんだろう。
愁夜さんは私の傍に居てくれる人じゃない。
この世界の本当の愁夜さんは、今私の前にいる愁夜さんとはある意味別人なんだから。
だけどこのまま愁夜さんが元の世界に戻ったら、愁夜さんはこの世界の『西谷愁夜』さんとして生きる。
そしてそれは、愁夜さんであって愁夜さんではないのかもしれない。
「……じゃあ、もう、会えないの?
五年後の世界に戻った愁夜さんに、私は絶対会いに行くよ」
必死にそう口にしても、愁夜さんは首を傾げた。
「そうは言ってもね。
今、俺が元の世界に戻れば、未来は変わる。
どう変わるかは、俺にだってわからないんだ。
真美が生きて幸せになる世界で、俺がどう生きてるか」
愁夜さんの言葉が、頭の中でグルグル回る。
想像がつかない。
愁夜さんが望んだ未来が創り上げられた時、愁夜さんは自分でも知らない自分に変わる。
今の愁夜さんがどうなるのか。
「これまでは自分がどうなるかなんて考えてなかったから、あんまり気にしてなかったけど。
……そうだね。未来が変われば、俺もそこから歩いて行かなきゃいけない。
これまでの経験も記憶も持ったまま、多分俺の周りだけが一変する。
その時俺の傍には誰かいるかもしれないし、独り切りかもしれない。
わかるだろ?
自分の事もわからないのに、約束なんか出来る訳がない」
自嘲するように笑った愁夜さんに、私は言葉を失った。
この人はこれまで、一体どれだけ自分を犠牲にしてきたんだろう。
望んだ未来を創り上げる為の代償は、限り無く愁夜さんを孤独にする。
未来が変わった途端に、愁夜さんはそこから新しい自分の人生を歩くんだ。
28歳までどう生きて来たかもわからない自分の人生を。
振り返って、そこに自分が歩んだはずの道が喪失しているのを見るのは、どんなに怖い事だろう。
私にはとても考えられない。
だけど愁夜さんは自分の事なんか何も言わずに、私を宥めようとする。
愁夜さんは私の傍に居てくれる人じゃない。
この世界の本当の愁夜さんは、今私の前にいる愁夜さんとはある意味別人なんだから。
だけどこのまま愁夜さんが元の世界に戻ったら、愁夜さんはこの世界の『西谷愁夜』さんとして生きる。
そしてそれは、愁夜さんであって愁夜さんではないのかもしれない。
「……じゃあ、もう、会えないの?
五年後の世界に戻った愁夜さんに、私は絶対会いに行くよ」
必死にそう口にしても、愁夜さんは首を傾げた。
「そうは言ってもね。
今、俺が元の世界に戻れば、未来は変わる。
どう変わるかは、俺にだってわからないんだ。
真美が生きて幸せになる世界で、俺がどう生きてるか」
愁夜さんの言葉が、頭の中でグルグル回る。
想像がつかない。
愁夜さんが望んだ未来が創り上げられた時、愁夜さんは自分でも知らない自分に変わる。
今の愁夜さんがどうなるのか。
「これまでは自分がどうなるかなんて考えてなかったから、あんまり気にしてなかったけど。
……そうだね。未来が変われば、俺もそこから歩いて行かなきゃいけない。
これまでの経験も記憶も持ったまま、多分俺の周りだけが一変する。
その時俺の傍には誰かいるかもしれないし、独り切りかもしれない。
わかるだろ?
自分の事もわからないのに、約束なんか出来る訳がない」
自嘲するように笑った愁夜さんに、私は言葉を失った。
この人はこれまで、一体どれだけ自分を犠牲にしてきたんだろう。
望んだ未来を創り上げる為の代償は、限り無く愁夜さんを孤独にする。
未来が変わった途端に、愁夜さんはそこから新しい自分の人生を歩くんだ。
28歳までどう生きて来たかもわからない自分の人生を。
振り返って、そこに自分が歩んだはずの道が喪失しているのを見るのは、どんなに怖い事だろう。
私にはとても考えられない。
だけど愁夜さんは自分の事なんか何も言わずに、私を宥めようとする。