解ける螺旋
俺が最後に壊した世界が辿った未来。
今の俺が存在するのは、幾つも創り上げて来た世界を切り貼りして再構築された、まったく別の新しい未来だ。


この世界の人間には何の不思議もない。
もちろん矛盾だってある訳がない。
異質なのは、全てを観測し続けた俺の存在だけ。


真美が生きている事さえ確認出来れば、俺が過去に干渉する必要はない。
記憶にない事を身体が覚えている違和感はあるけれど、それはそれで好都合だ。
医者として生きるなんて無謀だと思ったけれど、幸い身体が勝手に動いてくれる。
知識もきっと直ぐに追いつくんだろう。


何も問題はない。
何よりもこれは俺自身が望んで願った未来だ。


これ以上何を求める?
これ以上の成功がある訳がない。


なのに、この寂寥感は一体どこから生まれて来るのか――


やり遂げたはずなのに。
この広い見覚えの無い世界で、俺はどうしようもない孤独を感じていた。
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