解ける螺旋
――生きていてくれた。


それだけで感無量だった。
無数の世界を繰り返しても、救う事の出来なかった命。
今、やっと一つに集約された世界には、真美が生きていた。


心の動揺が現れたのか、自分の表情が物凄く強張ってるのを感じた。
だから真美の姿を確認しても、俺はホッとしているのに上手く笑えない。


そのせいか。
真美は嬉しそうに笑った後、フッと視線を下に向けて、少し声を低めて俺にこう言った。


「……ごめんね、お兄ちゃん。また心配掛けたんでしょ?
でも、大丈夫。大丈夫だから」

「え?」


何故か申し訳なさそうに、俺に心配を掛けたと言って謝る。
カルテを見る限り、経過は良好のはずだった。
真美が俺に何の心配を掛けたと言っているのか。
多分俺の奥深い記憶は理由を知っているんだろうけど、今記憶は働かない。


「お兄ちゃん、まだ微妙な顔してる。
けどね、私は健太郎さんが気持ちに応えてくれた時から、本当は釣り合う相手じゃない事位自覚してたから。
……もちろん彼はご両親を説得するって言ってくれたけど、相手が奈月さんじゃ。
結城財閥には最良のご縁だし、奈月さんなら私は……」

「え……?」
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