解ける螺旋
――五年はやっぱり長かったか。


奈月が俺を待っていなかった。
ただそれだけで俺はこんなに動揺して、イライラして。


怒る必要なんかない。
俺は約束しなかったし、勝手にしろと言っただけなんだから。


奈月が俺の傍に居なくても責める権利もないし、そんな事出来ないってわかってるのに。


――どこの時空に跳べばいいんだろう。


これからあの座標計算機を作って、いつ出来上がる?――


そんな事を本気で考えた自分に動揺した。


何を考えてるんだ、俺。
そんな事をしなくても、真美は生きる。この先も。
救えなかったと悔やんで、そして突然の喪失に狂いそうになった世界は、もうどこにもない。
それなのにこれ以上何を変える必要がある?
どう考えても自分の為でしかない。


そんな理由で跳ぼうと考えてる自分に戸惑う。
正気の沙汰とは思えない。
ただ奈月が俺を待っていなかったというだけで。


『待っててくれ』と言えなかった自分を変えようとする為だけに。


――俺はどうして自分の望んだ未来を拒む?
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