解ける螺旋
奈月に近付いたのが間違いだったんだと、自分に言い聞かせた。
元々どの世界でも、俺は奈月の敵でしかなかった。
最後の世界でも、最初は彼女を殺す敵でしかなかったはずなのに。
奈月の心を変えるつもりはなかった。
そうなるとも思っていなかった。
予想外の事なんだから、今俺が動揺しているのだって絶対に何かの間違いなんだ。
いや、動揺する事事態、本来ならあるはずがなかったんだ。
――つい数時間前には隣にいた。
奈月の声も温もりも感触も全部覚えてる。
俺にとってはほんの一瞬前の事。
だけど奈月にとっては長い五年間だ。
わかっているのに、心が奈月を責める。
どうして俺を待てなかった?
何故結城の元に戻る?
モヤモヤしながら、だけど何かに急かされて俺は病院を飛び出した。
どこに帰るのかも曖昧だったのに、俺は当たり前の様に職員駐車場に向かった。
コートのポケットにあった鍵を操作すると、分不相応と言える高級車がライトを点滅させた。
どうやら俺は、医者としてそれなりに認められた未来にいるらしい。
この世界に何の不満がある?
願った未来は手に入れた。これ以上何を求めるのか。
そう考えてるのに、俺は唇を噛む。
元々どの世界でも、俺は奈月の敵でしかなかった。
最後の世界でも、最初は彼女を殺す敵でしかなかったはずなのに。
奈月の心を変えるつもりはなかった。
そうなるとも思っていなかった。
予想外の事なんだから、今俺が動揺しているのだって絶対に何かの間違いなんだ。
いや、動揺する事事態、本来ならあるはずがなかったんだ。
――つい数時間前には隣にいた。
奈月の声も温もりも感触も全部覚えてる。
俺にとってはほんの一瞬前の事。
だけど奈月にとっては長い五年間だ。
わかっているのに、心が奈月を責める。
どうして俺を待てなかった?
何故結城の元に戻る?
モヤモヤしながら、だけど何かに急かされて俺は病院を飛び出した。
どこに帰るのかも曖昧だったのに、俺は当たり前の様に職員駐車場に向かった。
コートのポケットにあった鍵を操作すると、分不相応と言える高級車がライトを点滅させた。
どうやら俺は、医者としてそれなりに認められた未来にいるらしい。
この世界に何の不満がある?
願った未来は手に入れた。これ以上何を求めるのか。
そう考えてるのに、俺は唇を噛む。