解ける螺旋
だけど。
奈月は俺の背後でドアに鍵をかけると、泣きそうに顔を歪めた。
俺と奈月以外に誰もいない空間で、俺が最後に見た奈月と同じ様に感情を爆発させる。
「そんな簡単なはずないじゃないですか!
……私がこの五年間どんな気持ちでいたか。
愁夜さんが戻るこの時空までは、近付く事も出来ないまま。
本当に戻って来てくれるかもわからない、戻って来ても私との記憶もないかもしれない。
他に彼女がいるかもしれない。
だけど愁夜さんがしたみたいに干渉する訳にもいかなくて……。
……私はそんな不安に必死に耐えながら、今日この日をずっと待ってた!!
それなのに、あなたは研修医の期間を終えた途端、真美さんにも言わずにアメリカに留学してしまったの!」
ドンッと胸を叩かれる。
一瞬息を止めて、俺はただ呆然と奈月を見下ろした。
「……その間、逢うことも連絡することも出来なくて。
半年前に戻って来たって事も私は知らなかった。
最近になってやっとあの病院に勤務してる事がわかって、こうして逢うのだってどんなに怖かったか……」
言っているうちに感情が昂ったのか、奈月は自分の言葉で声を詰まらせた。
「……」
とても言い返せない。
俺はこの一瞬で奈月の心が変わったと思い込んでいた。
過ごした時間が違う。
五年待っても、俺が記憶を残したままで戻るかわからない。
戻って来てもよく知っている俺じゃないかもしれない、って不安を抱え続けた奈月に、反論はおろか謝る事すら出来ない。
そんな気持ちになるのは、今の俺が、全てを集約した『西谷愁夜』だからなのか。
奈月は俺の背後でドアに鍵をかけると、泣きそうに顔を歪めた。
俺と奈月以外に誰もいない空間で、俺が最後に見た奈月と同じ様に感情を爆発させる。
「そんな簡単なはずないじゃないですか!
……私がこの五年間どんな気持ちでいたか。
愁夜さんが戻るこの時空までは、近付く事も出来ないまま。
本当に戻って来てくれるかもわからない、戻って来ても私との記憶もないかもしれない。
他に彼女がいるかもしれない。
だけど愁夜さんがしたみたいに干渉する訳にもいかなくて……。
……私はそんな不安に必死に耐えながら、今日この日をずっと待ってた!!
それなのに、あなたは研修医の期間を終えた途端、真美さんにも言わずにアメリカに留学してしまったの!」
ドンッと胸を叩かれる。
一瞬息を止めて、俺はただ呆然と奈月を見下ろした。
「……その間、逢うことも連絡することも出来なくて。
半年前に戻って来たって事も私は知らなかった。
最近になってやっとあの病院に勤務してる事がわかって、こうして逢うのだってどんなに怖かったか……」
言っているうちに感情が昂ったのか、奈月は自分の言葉で声を詰まらせた。
「……」
とても言い返せない。
俺はこの一瞬で奈月の心が変わったと思い込んでいた。
過ごした時間が違う。
五年待っても、俺が記憶を残したままで戻るかわからない。
戻って来てもよく知っている俺じゃないかもしれない、って不安を抱え続けた奈月に、反論はおろか謝る事すら出来ない。
そんな気持ちになるのは、今の俺が、全てを集約した『西谷愁夜』だからなのか。