解ける螺旋
泣いている奈月を無意識に抱き寄せた。
奈月の目尻に滲んだ涙を、黙って指で掬い取る。
俺の腕の中で、奈月の身体が小さく震えた。
俺にとってはほんの少し前の事。
だけど奈月は五年という年月を一人で待ち続けた。
それが俺が体験して来た幾つもの世界と重なる。
俺の知らない五年間、奈月は孤独で。
ただ俺に押し付けた約束の為だけに。
奈月は震えながら俺の胸にしがみついていた。
もちろん、俺は拒まない。
「……ごめん、奈月」
素直に声が出た。
「……許さないです」
五年も経つのに、意地っ張りなところは変わらないらしい。
俺は、仕方なく、と言うか。
半分以上自分の欲求だけで、キスで宥めようと奈月の頬に触れた。
胸元から奈月が見上げて来る。
だけど。
「……っ!」
涙目のまま見つめられて、戸惑った。
頬を撫でていた手が強張るのを感じる。
キスどころか、顔を近付ける事も出来ず、俺は誤魔化す様に奈月の頭を胸に強く抱きしめる。
奈月も何も言わずに俺の背中に腕を回した。
奈月の目尻に滲んだ涙を、黙って指で掬い取る。
俺の腕の中で、奈月の身体が小さく震えた。
俺にとってはほんの少し前の事。
だけど奈月は五年という年月を一人で待ち続けた。
それが俺が体験して来た幾つもの世界と重なる。
俺の知らない五年間、奈月は孤独で。
ただ俺に押し付けた約束の為だけに。
奈月は震えながら俺の胸にしがみついていた。
もちろん、俺は拒まない。
「……ごめん、奈月」
素直に声が出た。
「……許さないです」
五年も経つのに、意地っ張りなところは変わらないらしい。
俺は、仕方なく、と言うか。
半分以上自分の欲求だけで、キスで宥めようと奈月の頬に触れた。
胸元から奈月が見上げて来る。
だけど。
「……っ!」
涙目のまま見つめられて、戸惑った。
頬を撫でていた手が強張るのを感じる。
キスどころか、顔を近付ける事も出来ず、俺は誤魔化す様に奈月の頭を胸に強く抱きしめる。
奈月も何も言わずに俺の背中に腕を回した。