解ける螺旋
鼓動を聞かれるとわかっていても、知られてるんだからもう諦めがつく。
それよりも今の自分の顔を見られる方がずっと恥ずかしいし、勝ち誇った奈月を見ているのも癪に障る。


「ふふ」


見抜いているんだろう。
奈月は俺の胸をくすぐる様に、顔を擦り寄せながら含んだ笑い声を上げている。 


――このまま強気でいられる位なら、やっぱりもう一つ世界を作るか。


本気でそんな事を考えながら、悔し紛れに奈月の背中を撫でて。


「ん?」


微妙な違和感に気付く。
それが何か確かめようとして、何度か背中を撫で上げた。
そしてそのまま違和感の正体を探して、手を下にずらして行く。
腰からお尻、太腿にまで手を這わせて。


「ちょ、愁夜さ……!?」


戸惑う様に焦った声を上げて、奈月が身を引く。


「ん? あれ……」

「なっ! ちょっ、ちょっと!? バカっ!
朝っぱらからどこ触ってるんですか!」


奈月が多分本気で俺の手を制止しようとした。
それに気付いたから、俺も自分のペースを取り戻した気分になる。


「うん? ああ、そういうの気にしなくて大丈夫だよ。
俺、医者みたいだし。診察だと思ってれば」
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