解ける螺旋
そう言って足の付け根から下腹部を撫で上げると、奈月は息を飲んで真っ赤な顔をする。


「あ、あのねっ! 普通のお医者様はこんな触り方しないわよっ!
っ!? ……ひゃあっ!」


奈月の叫びとほぼ同時に、俺は奈月の脇腹をキュッと指で摘まんだ。
そうして違和感の正体に気付いてから、俺はニヤッと笑った。


「そっか。やっとわかった。
……奈月さ、太っただろ」


身体の大捜索を終えて、半泣きになっている奈月を見下ろす。
奈月は一瞬目を丸くして。


「な、何!? まさかそれ確認する為にあんな触り方したの!?」


驚いた後、激怒した。


「信じらんない! 最低っ! 変態っ!」

「酷い言い草。医者だって言ってるだろ」


あまりな言葉に眉をひそめる。


「昨日の奈月+二キロってとこかな。
ボリュームが出たのは尻と腹。……まあ甘めにみて胸も」

「昨日のって!
言っとくけど、私が愁夜さんと別れてから五年経ったの!
二キロ位、十分誤差の範囲よ!」

「ああ、そういう事にしとこっか」


真っ赤な顔で怒っている奈月を見ていたら、とりあえず形勢逆転した気になってホッとする。
いくらなんでも奈月にここでからかわれたら、一生の不覚だ。


先祖代々、いや、子々累々まで笑いの種にされる。


――そう、一生。
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