解ける螺旋
リビングに射し込む太陽の光が強くなってきて、いつの間にか昼近くになっているのに気付いた。
奈月が昼食を作ると言い出したけれど、きっと調理して食べる様な物はない。
きっと俺は、まともにこの部屋で食事なんかしてないんだろう。
見て回っただけでも調理道具は新品みたいに綺麗だったし、食器棚の中もやたら高そうな食器が綺麗に重ねられているだけだった。
普通に考えても、食材なんかある訳がなかった。 


俺がそう言う前に冷蔵庫を開けた奈月が、案の定眉間に皺を寄せて溜め息をついた。
どうしようか考えている彼女を見ながら、俺も苦笑いしか出来ない。
気持ちは嬉しいけど、食事よりも眠りたかった。


夜通し自分の研究に没頭して、夜を明かす位は散々して来た。
だけど医者として当直勤務をこなしながら徹夜するのは、医者の身体の俺でも疲弊するらしい。


病院にいれば大丈夫なんだろうけど、さすがに自分の部屋ですぐそこにベッドがある環境では睡魔が襲う。
買い物に行こうかと悩む奈月を背に、俺は肩を竦めて欠伸をして、一人でバスルームに向かった。
< 264 / 301 >

この作品をシェア

pagetop