解ける螺旋
奈月と結城の関係は変わる事なく、奈月は大学で助手として研究を続けていた。
結城は修士課程を終えると結城財閥の研究所に入り、今は相沢夫妻にしごかれながら研究を続け、いずれは財閥の当主を継ぐ事になっている。


あれから五年。
28歳になって、結城が研究所で主任研究員になったのを機に、婚約騒動が持ち上がった。
それが今から半年前だと言う。
それはある意味、当然の成り行きだとも思える。


―――もしも、俺が。


二人の日常に干渉して、奈月の心を結城から奪っていなければ。
そのまま二人は婚約して結婚する流れになっていたのか。
それとももっと早い段階で実現していたのか。


だけど二人は。お互いに自分の親を説得して、婚約の話を白紙撤回しようとし続けている。
そんな奈月の言葉を聞きながら、俺は目を閉じたままで無意識に手を伸ばした。
そこにあった奈月の手を引くと、ギュッと握り締めた。


――ここにいる。


奈月が俺を呼ぶ声を、微睡みの中で聞いていた気がする。
彼女と結城の婚約の話を聞いている最中だと言うのに。
妙な安堵感に守られる様に、俺は結局寝落ちしていた。
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