解ける螺旋
君を愛してる
気だるさに目が覚めた。
「……う……」
声と同時に目を開けたつもりなのに、視界がぼやける。
身体に沈み込んで行く様なこの疲労はなんなんだ。
眠りから覚めて起きる時はいつもそうしていた様に、俺は今の自分がどこにいるのか、眠る前までは何をしていたのかをゆっくり思い出そうとした。
何度も時空跳躍を続けて来た俺の記憶は、油断すると今この瞬間の位置すら曖昧になる。
心がぶれない様に。
身体を横にしたままで冷静に思い起こすのは難しい事じゃない。
何度も何度もやって来た。
意識を自分に集中させて、周りの物を全て意識から遮断して。
自分の中から湧き上がる感覚だけを頼りに記憶を辿れば、そう慌てなくても世界が俺の中に戻って来る。
自分の穏やかな心臓の音を聞きながら、俺の手が無意識にベッドのシーツの上を滑る。
何かを探す様に指が微かに動くのがわかる。
同時に微かな空気の振動が、俺の耳に声を届ける。
そうだ。
それは眠る前の俺が最後に感じていた温もり。
絡めた指のしなやかさ。
そして俺の耳をくすぐる穏やかな柔らかい声。
――奈月。
良かった。
君は、ここにいる。
「……う……」
声と同時に目を開けたつもりなのに、視界がぼやける。
身体に沈み込んで行く様なこの疲労はなんなんだ。
眠りから覚めて起きる時はいつもそうしていた様に、俺は今の自分がどこにいるのか、眠る前までは何をしていたのかをゆっくり思い出そうとした。
何度も時空跳躍を続けて来た俺の記憶は、油断すると今この瞬間の位置すら曖昧になる。
心がぶれない様に。
身体を横にしたままで冷静に思い起こすのは難しい事じゃない。
何度も何度もやって来た。
意識を自分に集中させて、周りの物を全て意識から遮断して。
自分の中から湧き上がる感覚だけを頼りに記憶を辿れば、そう慌てなくても世界が俺の中に戻って来る。
自分の穏やかな心臓の音を聞きながら、俺の手が無意識にベッドのシーツの上を滑る。
何かを探す様に指が微かに動くのがわかる。
同時に微かな空気の振動が、俺の耳に声を届ける。
そうだ。
それは眠る前の俺が最後に感じていた温もり。
絡めた指のしなやかさ。
そして俺の耳をくすぐる穏やかな柔らかい声。
――奈月。
良かった。
君は、ここにいる。