解ける螺旋
奈月は俺の剣幕に驚いて、俺に駆け寄って来る。
そして俺の腕を掴んで、支える様にしてから俺を見上げた。


「……大丈夫? 愁夜さん、大丈夫?」

「……なんで傍にいないんだよ……っ」


まるで子供が癇癪を起こす様に叫んで、俺は奈月をきつく抱きしめていた。
眠りに落ちる前に感じていた温もりが俺の腕の中に戻って来る。
それに少しだけホッとして、だけど安心しきる事が出来ず、俺はもっと強く奈月の身体を掻き抱いた。


「よ、かった……」


自分でも聞いた事がない位、弱々しい安堵を含んだ声に戸惑う。


「……ごめんなさい。怖かったの?」


奈月の腕が俺の頭の後ろに回った。


目覚めた時に奈月がそこにいなかったというだけでこんなに慌てて、姿が見えなかった事に怯えていたなんて知られたくない。
なのに俺は奈月の言葉を否定もせずに、奈月の首筋に顔を埋めた。


「ごめんね。……愁夜さんは寂しがり屋だもんね」


俺の心の混乱に気付いたのか、奈月も腕に力を籠める。


「ずっと、独りきりだったんだもんね」

「っ……」

「でも、私、ちゃんと傍にいるから。
これからは、ずっと」

「……」


ほんの少しの隙間すら埋め尽くすように、強く強くお互いの身体を抱き締め合った。
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