解ける螺旋
それまでに私達の間で、話題になった事は一度もなかった話。
何て事はない。
当たり前に転がっている、『好きな人』の話だった。


その日家庭科の授業で作ったマドレーヌを、友達がある男の子にプレゼントするのに付き添った。
学年に一人はいる、女の子の憧れになる様な男の子。


私はその子の事を好きだった訳でもなんでもなくて、ただ友達の付き添いで付いて行っただけだと言うのに。
何故か健太郎が聞いた噂では、私も一緒にプレゼントしたって嘘に捻じ曲げられていた。


完全な誤解だったけど、趣味が悪いって言われた様な気がする。


とにかくムッとした私は誤解を解こうとは思わずに、同じネタで健太郎に切り返した。


健太郎だって、誕生日に女の子からプレゼントもらってデレデレしてたって聞いた事あるけど、と。
当然お互いに意地を張って言い合いになった。


もうどちらからも謝れない空気になって、結局私は怒ったまま、健太郎の家を出て自分の家に帰ろうとした。
健太郎ももちろん止めない。


そしてその後。
私が健太郎の家を出た直後、犯人に連れ去られた、と話が続く。
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