解ける螺旋
奈月の完全に方向の違う気遣いも虚しく、混乱している結城が哀れにも思えて来た。
しかも熱いコーヒーを勢いよく飲んでむせ返った上に、口腔内を火傷したんじゃなんとも言い様がない。
なのにこんな状況にも慣れたもんなのか、奈月は涼しい顔でコーヒーを飲んでいる。


「バカか、お前はっ!
聞いてた方が心の準備が出来るに決まってるだろ」


なんと言うか。これも幼なじみっていう関係の呼吸なのか。
吠える結城をこれだけ軽くあしらう奈月に、俺は苦笑を浮かべた。


結城は俺がやった事を知り抜いているはずなのに、俺が未来に戻った事に半信半疑だ。
しかも。


「……奈月。
これ、本当に先生なのか」

「そう言ってるじゃない」


『これ』扱い。


「……結城。君は今までの俺とそれなりに友好的な関係を築いてたんじゃないの?
名前で呼ぶ仲のくせに、なんで『これ』?」


俺が知ってる姿よりも大人びている結城にちょっとムッとした。
さらにやっぱり珍獣扱いが消えないのにもムッとして、大人気ないとわかっていて刺々しい声を出した。


それがわかるのか、火傷のせいか、結城はそれ以上に不機嫌に俺から顔を背ける。
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