解ける螺旋
今更償える事じゃない。
そして謝れる事じゃない。


もし俺が結城にごめんと言ってしまえば、この五年間結城が一人で守って来たものを俺がぶち壊してしまう。


知っていて結城がずっと黙っていたならば。
この先もずっと言わずに生きて行くつもりなら。
俺は責任を取って、一生結城の『嘘』に付き合わなければいけない。


「……好きだよ。だから俺は戻って来たんだ」


嘘をつかずに言える言葉が見つかったのは幸運だった。
今この場で奈月を好きだという気持ちは本物だ。


結城にとっては五年前でも、俺にとってはつい昨日までの世界の出来事。
過去形ではない今の気持ちが続いている。


奈月は何かを感じたのか、俺を見て黙っている。
結城は俺の返事を聞いて、一拍置いてからホッと息を吐いた。


「……それだけ確認しておきたかったんだ。
それならいい。
俺も奈月の心配する役目から解放される。
まあ、これからよろしくな、兄さん」

「誰が君の兄さんだ」


つい条件反射でそう言ってしまったけど、結城の笑顔には曇りがなくて、俺はつい目を逸らした。


「まあねえ。実際まだちょっと片付いてない問題はあるんだけど。
大体の目処は立ったから。
奈月に呼び出されて会わなくても、愁夜にはどうにかして連絡取ろうと思ってたんだ。
だから助かった。
そうだ、あんた今どこの病院に勤務してるんだ？」


無意識で勤務先の名を告げると、礼を言って立ち上がる結城を見上げた。
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