解ける螺旋

　前提条件の出逢い

「健太郎様。こちらが……」


歓談の時間に入ってから直ぐ、健太郎が結城財閥の関係者に声を掛けられた。
呼ばれたのは健太郎だけだけど一緒に振り向くと、私とそう年の変わらない女の子が緊張した面持ちで立っていた。


「……薬の治験者とした協力下さった方です」


健太郎に耳打ちされた言葉を拾って、私は直ぐに納得した。


可愛らしい顔立ち。
それなりのお化粧はしていても、顔色がそんなに良くない事は私にも見て取れる。
こんな晴れやかな場所は初めてなんだろうけど、物凄く緊張している様子は私にも直ぐに感じ取れた。


治験者と聞いて、健太郎は直ぐに表情を変えた。
そして彼女に真っ直ぐに向き合った。


私もそっと健太郎の腕から手を離した。


少し前から、こういうパーティーの場で健太郎が見せる様になった大人びた表情。
私から見たら、ちょっとだけ健太郎を遠く感じる様な営業用の顔。
だからこそそれが、結城財閥の後取りとしての自覚の表れなのはよくわかる。


「は、初めまして、西谷真美（にしたにまみ）です」


彼女は緊張を隠せずに少し早口でそう言うと、私と健太郎に勢いよく頭を下げた。
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