解ける螺旋
笑顔で話し掛けると、西谷さんの表情が少し曇ったのを感じた。
やっと和んだ表情に、また少しだけ別の緊張が走ったのを見て取れる。
それを見て、いくら私でもピンと来た。


――これはもしかしなくても。


なんだか母親の様な気分になった。


もう、健太郎ってば罪な男だなあ。


しみじみと思いながらも、呑気にそんな事を考えてる場合じゃない。


どうやら私は健太郎との関係を誤解されてる上に、彼女を失望させている。
それがわかったから、私はとりあえず気を利かせた。


「あの。西谷さん、お一人ですか?
私は父に用があるから、良かったら健太郎の相手をお願いしていいですか?
こういう席だし、彼も女性のエスコートをしていないとカッコつかないので」

「……は?」

「え? えっ……!?」


ものすごく不審な顔をした健太郎と、わかりやすい位顔を赤くした西谷さん。


嘘はついてない。
格式のある社交界の場では、男女ペアが基本。


ここは日本だからそれほどうるさくないけれど、結城財閥の跡取り息子でそれなりの年頃の健太郎には相手がいないと示しが付かない。


これまでは本当に健太郎に決まった相手がいなかったから私がお付き合いして来たけれど、そろそろ幼なじみ離れ出来るのかもしれない。
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