解ける螺旋
それを見て、健太郎もやっと納得して西谷さんに一歩歩み寄った。


「却ってご迷惑掛けてすみません。
少しだけお付き合いいただけますか?
……ったく。お前今日は逆ナン続きだな。
西谷さんのお兄さんにまで迷惑掛けるなよ」


――む。


さすがに文句も言いたくなったけど、とりあえずここはぐっと堪えた。
よく見たら健太郎も私以外の女性のエスコートにそれなりに緊張してるみたいだし、キャラが元に戻ってる。


だから代わりに、早く行けとばかりに健太郎に手を振って見せると、健太郎は西谷さんの背を押して会場の中央に歩いて行く。


西谷さんは後ろ姿すらガチガチに固まってるのがわかるけど、健太郎は場慣れしてるし、女の子の扱いもそこそこ上手いから任せて大丈夫だろうと息をついた。


さて、と。


一人になったはいいけど、私もこういうパーティーはそんなに得意じゃない。
こういう場では結局いつも健太郎と一緒だったし、別々に行動する事に慣れていないのは私も健太郎と一緒だった。


――これはお互いに幼なじみ離れしないと、かも。


都合よく口実にしただけだったけど、西谷さんのお兄さんが庭にいるなら本当に捜してみてもいいかもしれない。


そう決めて、私は大きな一枚ガラスの窓から見える日本庭園に足を向けた。
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