解ける螺旋
盛大なパーティー会場から漏れる明かりで、庭も歩くのに困らない程度の明るさはある。
私は庭の風景を眺めてゆっくり歩きながら、ついでに西谷さんのお兄さんらしい人がいないかと周りを見回してみた。
だけどそれらしい人は近くには見当たらず、私は池の畔で足を止めた。
逆ナン、なんて言われたせいか、なんとなく考えてしまうのは、今日出逢った先生の事だった。
そして先生を思い出すと、結局十歳の時に巻き込まれた誘拐事件に思考が飛ぶ。
一体今日だけで何度あの時の事を思い出しているんだろう。
思い出したい記憶じゃない。
だけどとても怖くて恐ろしい思いをしたからこそ、あの時私を助けてくれたあの人の事は忘れられない。
あの後は一度も会った事がない。
名前も連絡先も、どうして私を助けてくれたのかもわからない。
助け出された私は、『あの人』に連れられてひたすら山を下った。
途中で背負ってもらって眠ってしまって、目を覚ました時には自分のベッドに寝かされていた。
両親の話だと、匿名で健太郎の家に電話が架かって来て、河原に停められた車の中に私がいるから助けてやってくれという内容の密告があったらしい。
警察も両親も健太郎のご両親も、何かの罠かもしれないと警戒した。
だけど結局その電話に従って河原に行ってみたら、言われた通りに私が車の中で眠っていたんだと言う。
もちろん車は盗難車だった。
そして私を助けてくれた『あの人』の事は、私以外の誰も知らない。
私は庭の風景を眺めてゆっくり歩きながら、ついでに西谷さんのお兄さんらしい人がいないかと周りを見回してみた。
だけどそれらしい人は近くには見当たらず、私は池の畔で足を止めた。
逆ナン、なんて言われたせいか、なんとなく考えてしまうのは、今日出逢った先生の事だった。
そして先生を思い出すと、結局十歳の時に巻き込まれた誘拐事件に思考が飛ぶ。
一体今日だけで何度あの時の事を思い出しているんだろう。
思い出したい記憶じゃない。
だけどとても怖くて恐ろしい思いをしたからこそ、あの時私を助けてくれたあの人の事は忘れられない。
あの後は一度も会った事がない。
名前も連絡先も、どうして私を助けてくれたのかもわからない。
助け出された私は、『あの人』に連れられてひたすら山を下った。
途中で背負ってもらって眠ってしまって、目を覚ました時には自分のベッドに寝かされていた。
両親の話だと、匿名で健太郎の家に電話が架かって来て、河原に停められた車の中に私がいるから助けてやってくれという内容の密告があったらしい。
警察も両親も健太郎のご両親も、何かの罠かもしれないと警戒した。
だけど結局その電話に従って河原に行ってみたら、言われた通りに私が車の中で眠っていたんだと言う。
もちろん車は盗難車だった。
そして私を助けてくれた『あの人』の事は、私以外の誰も知らない。