解ける螺旋
だから、どうやって場所を知る事が出来たか、どうやって助け出したか。


その疑問を説明するには、そもそも最初から『あの人』が犯行現場に居たからだと言う説明が一番しっくり来る。そう言う事だった。


だけどそれを私が否定した。


だって私がロープを解いてもらった時に囁かれた声は、それまでに聞こえた犯人の会話で聞いたものではなかったから。
もちろん、犯人の声も、『あの人』の声も説明も再現も出来なかった私の証言に、信憑性など何もない。


だけど泣いて言い張った。


絶対に違う。
だって『あの人』は怖くなかった。優しかった、と。


まあ、そんな私のヒステリックな証言は結局公式文書に記載される訳もなく。
結局その後、『あの人』の足取りもわからず、犯人すらまだ捕まらない状況のせいか、私が言う『あの人』の存在はほとんど無視されていた。


多分きっと、警察はまだ犯人側の人間だと思っているんだと思う。
私の命の恩人なのに、結局どこの誰なのかもわからないまま。
しかも公式には、どちらかと言うと加害者側に捉えられている人。


正直、今思うと十歳の私の証言は確かに感情任せで、一般的に捉えられている様に、『あの人』は犯人側の人なんだと考えるのが妥当だとわかる。


だけど助けてくれた。
あの怖くて仕方ない状況から、助けてくれた。
だから信じたい、と思うのは間違った事なんだろうか。


そう、信じてるけれど……。


助けてくれた理由がきっとどこかにあるんだとは思ってる。
それがこの13年間で、変化した私の思考だった。
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