解ける螺旋
答えを探して黙る私の前で、先生は配線を繋ぎ直すとスッと立ち上がった。


「これでよし、と。
相沢さん。本番では気を抜かない様にね」

「……ありがとうございます」


本当に恥ずかしくて、そう呟くと俯いた。
そして他の箇所の点検に向かう先生の背中を見送ったまま。
さっきの先生の言葉がどういう意味なのか、考えちゃいけないと思いながら考えてしまう自分に困った。


準備が整って、後は電流を流して結果を観測するばかりになる。
私はあらかじめ決められたポイントに立って、放電の観察をして記録に残す事になっていた。


物理学の研究の実験は全てが全て危険な訳じゃないけれど、やっぱりそれなりに緊張感も漂う。
樫本先生に注意された手前、本当に気を引き締めないと、と自分に言い聞かせた。


その時。


「少しは意識、戻って来た?
配線ミスなんて、中学生みたいな事すんなよ」

「……健太郎!?」


掛けられた声に、慌てて振り返った。
さっきと同じ、白衣姿の健太郎が私の真後ろに立っている。


「今、気配感じなかったよ」


とりあえず危害のない相手だとわかって私は少しホッとして、次の瞬間眉をひそめた。


「……健太郎、なんでここにいるのよ。
あんたのポジションはここじゃないでしょ」


確か健太郎の受け持ちは電力の調整係だったはずなのに、どうして今私の後ろに居るのかわからない。


「お前がポーッとしてるから、結果の記録を逃す前にフォローしろって頼まれたんだよ。学生に」

「……はあ!?」
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