解ける螺旋
飛んだ火花が引火したのか、健太郎の白衣の背中に焦げ跡がはっきりと残っていた。
焼けて穴の空いた小さな痕の奥に覗く素肌。
軽くても火傷をしているのははっきりとわかる。


「大丈夫!? 健太郎……!」


思わずそう叫んで、健太郎が小さくシッと私を制した。


「大した事ない。……火は?」

「大丈夫です。このコードだけで済みました」


消火器を持って来てくれた学生の声に、健太郎がホッと息をつく。
その間にも、研究室の学生が私と健太郎の傍に駆け寄って来る。
その中には教授も樫本先生もいて、健太郎はしっかりと立ち上がった。


「すみません。電流が少し大きかったみたいです。
俺の確認不足でした。すみません」


しっかりした声で頭を下げた健太郎に、集まった学生がみんなホッと息をついた。


「いや、計算は間違っていなかったし、設定も確認した。
何の誤差が生じたんだか……」


謝る健太郎に教授も首を傾げる中、樫本先生が健太郎の肩に手を掛けた。


「失敗の追及は後。結城君、火傷の治療をしないと」


その言葉に、あ、と声を上げた時、健太郎が小さく笑った。


「大丈夫ですよ。この位、大して痛みません。それより実験を……」

「ダメだよ。ちゃんと医務室に行く事。
……なんなら僕が付き添うけど」

「先生、私が行きます」


樫本先生の言葉に私が反応した。
< 49 / 301 >

この作品をシェア

pagetop