解ける螺旋
一瞬だけ先生が眉をひそめて、だけど直ぐに頷いた。


「……そうだね。
彼を大人しく医務室に連れて行くなら、相沢さんに任せた方がいいのかな」

「すみません。……健太郎、歩ける?」


心配してくれた樫本先生に頭を下げて、私は健太郎に手を伸ばして、その手を軽く振り払われた。


「だから大丈夫だって、この位。
一人で行けるから、お前は残って設定と計算確認しておいて」


そう言った健太郎の様子はいつもと変わらず、私は少しだけ不安になりながら黙って頷いた。


「すみません。後はお願いします」


一人で校舎に歩き出す健太郎の足取りを見て、大事に至らなかった事にホッとした。
それを同じ様に見送っていた樫本先生が、チラッと私に視線を向けた。


「結城君は電流調整に就いてたはずだけど。
……なんでここに居たの?」


その声に私が答えるよりも早く、電流のボタンを押した学生が一歩前に出た。


「すみません。僕が変わってもらったんです。
相沢先輩が疲れてる様子だったから、ちょっと心配で」

「……う、ごめん」


私が肩を竦めて謝ると、樫本先生が口を開き掛けた途端に学生が騒ぎ出した。


「でも結果オーライですよね。
結城先輩がいなかったら、相沢先輩が火傷してたかと思ったら」

「うん。結城先輩にとっては、名誉の負傷ですよね!」
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