解ける螺旋
助手と研究生の関係で、どういうつもりで関わられたら私が泣く羽目になると言うんだろう。


「……くくっ。ごめんごめん。
相沢さんは可愛くていいね。
男としてはなんとなく意地悪してみたくなるって言うか」


そんな事を平然と言ってくれる先生に、私は何も言えずに口をパクパクと動かした。
文字通り『可愛い』と言う意味じゃないとわかっているから、なんだか悔しくて仕方がない。


「か、からかわないで下さいっ! 悪趣味です」

「一応好意を示してみたんだけど。
ほら、小学生の男の子だと、好きな子に意地悪するってお約束でしょ」


ずっと笑いっぱなしの先生を見ていると、やっぱりからかわれてるとしか思えない。
私は自分を落ち着ける為にも溜め息をついた。


「はあ。……もういいです。
あの。鍵持ってるんですよね。
開けますから、貸して下さい」


なんとか落ち着きを取り戻して手を出すと、あれ、スルー? と言いながら、先生も大人しく鍵を手の平に落としてくれた。


その鍵を確認して、私は鍵穴に挿し込む。
ドアを開けると研究室の独特の空気が漂って来て、少しだけホッとした。


「今日は結城君と打ち合わせなんだっけ」


背後の先生も、やっと満足したのか、からかうのを止めてそう聞いて来た。
はい、と返事をしながら、私は荷物を抱えている先生の為に大きくドアを開けた。


「……遅れるなって言ったの健太郎の方なのに。
どこ行ったか知りませんか?」


少しだけ溜め息をつきながら荷物をテーブルの上に置いて、樫本先生を振り返った。
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