解ける螺旋
「良く言われるんですけど。
あんまりいつも一緒だったから、却って今更意識出来ないんです。
そういう事って先生にもないですか?」


切り返してみると、樫本先生はうーんと宙を見上げた。


「僕にはいつも一緒って関係の女の子、いないからなあ」


考えながら返してくれた答えに、そっか、と呟く。


幼なじみのいる友達と話していても、大人になってからも関係が続いてる友達の方が少ない。
そもそも小学校の頃から続いてる友達すらいないと言う話も聞くから、そういう切り返しも予想はしていたけど。
だけど、と、私の思考を遮って、先生が声を出した。


「ずっと見守り続けた子はいる。
だからある意味では僕もわかるかな、そう言うの。
絶対に恋愛感情なんか抱く訳がない。……抱けない、彼女には」

「?」


何故か言い切った先生を何となく見つめた。
私の視線に気付いた先生が口の端に笑みを浮かべた時、私が声を出す前に研究室のドアが開いた。


「こんにちは~。って、奈月。もう来てたのか」


中に入って来た健太郎は、遅れて来たと言うのに悪びれた様子もない。


「遅いよ、健太郎」


とりあえず一言文句を言うと、健太郎は私の文句をあっさりスルーして、樫本先生にだけ頭を下げた。


「こんにちは。スケジュール調整するんだろう?」


健太郎に笑いかけた先生はいつもと全然変わらない。
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