解ける螺旋
多世界の研究をしている私はよく同じ様な図を作るし、文献で見たりもする。
それ以外の研究でも、一つの仮定から導かれる幾つかの推論を筋道立てて表すには一目で見てわかり易いから、他の学生が作っているのを見掛けた事もある。


そう言えば先生も少し前に私達と同じ研究をしたって言ってたっけ。


そう納得したらどんな事を研究してたのかな、と興味が湧いて、私はほとんど無意識に先生の背中に近寄っていた。


そして。


「先生、何を作ってるんですか?」

「……!?」


確かに声を掛けた時には既に近寄り過ぎていたかもしれない。
だけど思った以上に先生は驚いて、椅子を倒す位の勢いで立ち上がって振り向いた。


「なっ……! 相沢さん!? いつの間に……」

「す、すみません。
邪魔しちゃいけないかと思ったんですけど、つい……。
あの、それってフローチャートですよね?
先生が前に取り組んでた研究って、どんな……」

「……触るな!」

「え? ……痛っ……」


ちょっとだけ手を伸ばしただけだったのに、思い切り手を払われた。
それにびっくりして、瞬時に手を引っ込める。


「せ、先生……?」


戸惑って見上げて、私は一瞬ゾクッとした。
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