解ける螺旋
険しくて厳しい表情。
瞳の奥にある強い警戒心に、思わず息を飲んで。


――あ。

私はまた既視感に襲われる。


この目。この光。
私は知ってる。
それが何かを思い出すまでもなく、私は先生の剣幕に一歩後ずさった。


だけど私の反応に先生の方がハッとしたのか、すぐに目を背けられた。


「ごめん」


戸惑って揺れる私の視界の中、先生はパソコンをパタンと閉じて、私が見ていたフローチャートを隠した。


「あ……。す、すみません……。
私の方こそ、驚かせちゃったみたいで……」


必死に取り繕って笑ったけれど、先生はいつもの優しい笑顔を返してはくれない。


――怖い。


瞬間的に、そう思った。


怒ってる。それは感じ取れる。
だけど怒ってるから怖いんじゃなくて。


「……本当にごめん。
失敗した研究のデータなんだ。人にあまり見られたくない。
まさか君が見てたなんて思わなかったから」


そう言った先生はいつもと同じ表情を浮かべる。
だけどやっぱり少し強張っていて、声もどこかぎこちない。


「そ、そうですよね。本当にごめんなさい。
……覗き見なんて悪趣味でした」


必死にそう言い募ると、先生は落ち着きを取り戻したのか、やっといつもの柔らかい空気を身に纏う。
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