解ける螺旋
夢は自分の潜在意識の表れだと言うし、願望の一つだとも言うけれど、こんな事が自分の願望だと言われたらさすがにまいってしまう。


もう一度フウッと大きく息をついた。
それだけで少しはドキドキも落ち着いて来た気がする。


疲れているのかな、と思った。
身体は疲れているけれど、精神がやけに昂っていて中途半端なまま眠りについて、だからあんな夢を見るのかもしれない。


こういう状態では脳波の関係で悪夢を見る事が多い。
よく言う金縛りの現象も、こういう眠りの時に体験する事が多いと言うのは科学的に証明されている事実だ。


つまりちゃんと精神が休める状況で眠れば悪夢からも逃れる事が出来るはず。
そうわかっているのに、それは無理かな、と自分でも苦笑した。


疲れているのに、気になる事が多過ぎてとても精神が休まる事などない。
それでなくても、最近の私の周りでは、不可解な事が続いていた。


些細な事を上げれば切りがない。


グラウンドを歩いていたら野球ボールが飛んで来たり。
廊下が濡れていて足を滑らせて階段から落ちたり。


ちょっとグレードアップすると、実験中に調合ミスで化学反応を起こした薬でビーカーが破裂したり、歩いていたらどこかの窓から植木鉢が落ちて来たり。


本当にゾッとしたのは、駅で電車が入って来る直前に背中を押されて、ギリギリで転んでホームからの落下を免がれた事。


そしてそんな時、いつも助けてくれたのは健太郎だった。
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