解ける螺旋
◇
気持ちが晴れない。
誰もいない研究室で、私は自分のノートパソコンを前に、自分がフリーズしていた。
論文を一文書き上げようとする度に指が止まる。
科学的な論文で世の中の事象の一つ一つに説明を付けるよりも、今はフィクションの世界に逃げ込んでしまいたいとまで思う。
私にそんな文才があるならば、私は超大型SF作家にでもなれるんじゃないかと本気で考えていた。
――私の主観だけの実体験を軸にすれば。
そんなバカげた事を考えられるだけでも、まだ私の意識は腐っていないって事か。
そう考えたらホッとする一方で、現実から逃げられない自分の頭の固さに嘆きたい気分になる。
そうしてその日何度目かの溜め息をついた時、
「煮詰まってますね~」
妙に能天気な声に振り向いた。
「あ、教授」
誰もいなかった研究室に、この部屋の真の主の教授が立っていた。
教授が覗き込む私のパソコンには、さっきから一向に進まない論文が中途半端な所で止まったまま。
いつから見ていたのかわからないけれど、教授は私が煮詰まっている事を言い当てていた。
気持ちが晴れない。
誰もいない研究室で、私は自分のノートパソコンを前に、自分がフリーズしていた。
論文を一文書き上げようとする度に指が止まる。
科学的な論文で世の中の事象の一つ一つに説明を付けるよりも、今はフィクションの世界に逃げ込んでしまいたいとまで思う。
私にそんな文才があるならば、私は超大型SF作家にでもなれるんじゃないかと本気で考えていた。
――私の主観だけの実体験を軸にすれば。
そんなバカげた事を考えられるだけでも、まだ私の意識は腐っていないって事か。
そう考えたらホッとする一方で、現実から逃げられない自分の頭の固さに嘆きたい気分になる。
そうしてその日何度目かの溜め息をついた時、
「煮詰まってますね~」
妙に能天気な声に振り向いた。
「あ、教授」
誰もいなかった研究室に、この部屋の真の主の教授が立っていた。
教授が覗き込む私のパソコンには、さっきから一向に進まない論文が中途半端な所で止まったまま。
いつから見ていたのかわからないけれど、教授は私が煮詰まっている事を言い当てていた。