解ける螺旋
「昨日の実験ではなかなか面白いデータが取れたかと思ってましたが。
相沢さんには納得出来なかったですか?」

「……いえ」


ニコニコと笑顔を向けられて、肩を竦めた。
この研究室一の権威者であるはずの教授は、多分誰よりも腰が低い。
学生の私達にもいつもこうして敬語で話す。
そんな柔らかい人なのに、実験や研究には緻密だから、笑顔でやってのける教授は学生からも信頼されている。


相変わらずすごいなって思う。
心が乱されてばかりの私は、絶対にお手本にしなければいけない人かもしれない。


教授の言う通り、実験結果には何の文句もなかった。
論文に必要な追加の実験は、私の主張通り研究室メンバーを出来る限り総動員して行われた。
なんとか無理にお願いして、大規模に行った実験に満足いかないなんて寝言でも言えない。
むしろ実験自体は成功だったし、私だって満足した結果を得る事ができたけれど。
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