解ける螺旋
はあっ、と、溜め息は続く。
それを聞いても、教授はやっぱり穏やかで呑気だ。


「幸せが逃げますよ」


科学という分野を研究している教授の言葉なのか。
そう思ったけれど、私も教授の雰囲気に当てられて、そうですね、と笑った。


「今、相沢さんが溜め息をつかなかったら、本当に幸せが逃げないのか。
……あなたと結城君の研究は、そんな視点で進めても面白いかもしれません」

「……はは、人生観察ですね」


そう言いながら私は、それも面白いかも、なんて思っていた。


私の人生を最後まで見なければ、結果は得られない。
そう考えたら、果てしない研究だ。


今私がこの場で溜め息を我慢していたら、私は将来幸せになるか微妙に不幸になるか。
その結果を見てみたいとは思ったけれど。
自分が主観である以上、その結果は第三者で他人である『観測者』にしかわからない。

自分で観測するにはどうしたらいいんだろう、と思いながら、やっぱりSF作家になれるかも、なんて思考が生まれる。
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