解ける螺旋
だけど、そんな大事件を笑いを交えた一言で教授に言われると、近い未来にそれが可能になるのかもしれない、とすら思えて来る。


「……でも教授。
それは同じ時空。つまりこの並行世界での事ですよね?
垂直世界、つまり過去や未来の時空でもそれが可能だと思いますか?」


そう聞き返しながら、可能だ、と言う言葉を願ってしまう。
もしそんな事が可能だとしたら、私が思い悩む事象に簡単に説明が付いてしまうのだから。


だけど教授は、いずれは、と呟いて答えを濁す。


「科学を学ぼうという人間は、多かれ少なかれ夢見る物ですよ。
タイムマシン。私も可能ならば行ってみたいですね、過去の世界に。
ああ、あなたは過去に行きたいですか? それとも未来?」

「……過去、ですかね」


特に考えるまでもなくそう言った。


過去に起きた事象を変える事が出来なくても、この先無数に枝分かれする未来は、今この瞬間の選択肢でいくらでも見れる。
そして今、たとえば私が『未来をみたい』と言ったなら、そこから先にもまた違う未来が在るのかもしれない。


つまり未来は変えられる。
私はそう思ったからこそ、迷いも何もなかったのかもしれない。
そんな事を考えた時、ドアが開く音がして、私も教授も話を打ち切ってドアに目を遣った。
< 79 / 301 >

この作品をシェア

pagetop