解ける螺旋
それを聞きたかった訳じゃないけど、タイムマシンの話を続けるよりもいっそ有意義だと思った。
健太郎も私の両親も、考えてみたら誘拐された私と並行世界で起きた事を話してくれた事はない。
私が知った所で意味はないと思っていたのか、不要な恐怖を抱かせない為なのか。


確かに知らなくてもいい事なのかもしれないけれど、もう大人になったからには、あの時何が起きていたかは知っておきたいと思った。


「おじさん達が話してないのに、俺が話すのもどうかと思うけど」


こんな時はいつも以上に頭が固くなる健太郎に、私はなんとか食い下がった。


「お父さん達は聞かないから言わないだけよ。
それに、私が被害者の事件なんだから、やっぱり知っておきたいじゃない」


口から出まかせの口説き文句だったけど、健太郎は一応納得してくれた様子だった。
そしてチラッと私を見てから、重い口を開いてくれる。


「お前が経験した程でかい事は何もないよ。
誘拐事件が発覚した後、おじさんとおばさんが研究室から戻って来て、うちの親父が連絡した警察と対応を協議してた」

「協議って、何を?」

「身代金の受渡しの事とか。
……割と早い時間に犯人からの要求はあったんだ。
場所は川を渡る鉄橋の中央。
そこから金の入ったケースを落とせって指示があった。
だけどそれより早く電話があった。
お前がその川沿いに停められた車の中に居るからって。
指定された場所が場所だったし、何かの罠だって警戒する意見もあったけど、結局私服警官が付き添っておじさんが迎えに行った。
で、実際に奈月を見つけたって事」


健太郎の話を聞きながら、なるほど、と思えた。
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