解ける螺旋



そんな微妙な気持ちでいた私の心のせいなのか。
本当にただの気のせいなのか。
それまでのどんな会話や態度が原因だったのか覚えがないけれど、樫本先生の私に対する態度が変わった。


最初に逢った時のままに優しいし、ちょっと謎な雰囲気はそのままで。
時には意地悪をされて返答に困ったり、明らかに冷たくて途方にくれたり。

どう見ても、私の反応を楽しんでるとしか思えない行動や言動。


私の中でずっと消えない『ミステリアスでアンバランスな人』というイメージそのままに、その態度が私を翻弄して行く。
態度が変わる理由も、どうして私にだけそんな態度なのかもわからず。


――そう、それはいつも私と二人になる時だけ。


他の誰かが居る時は、いつもの優しくて頼りになる大人の『先生』という姿は変わらず。

だから私しか知らないかもしれない事を、『私の前だけ』と言うのは正確には間違ってるかもしれない。


だけど、健太郎に聞いても先生に対する評価は最初から全く変わっていなかったから、ほぼ私の想像通りなんだと思う。


ある意味『私だけ』なんだと思ったら、そこには何らかの思惑があるから、としか思えない。
それがどういう意味なのか。
何となく自意識過剰な方向に向かう気持ちも否定出来ない。
そして変に自惚れている自分が何を思っているのかもわからず。


だから今も、この状況に私は物凄く困っていた。
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