解ける螺旋
――……


20XX年


白衣を着た白い背中。
パソコンのキーボードの上を、驚くほど速いキータッチで滑らかに指が動く。


机の上には山の様に積まれた参考文献。
手元にあるのは、論文を書く為に探した資料の中から偶然発見した古い学会論文。


彼はそれまで、他分野の論文で糸口を見つける事が出来るとは思っていなかった。
だが、医学を学ぶ彼は、その論文の中にわずかながら可能性を見出していた。


この研究をもっと深く進められたなら、彼が欲する未来も夢ではない。


――いや、きっと叶えて見せる。


ただもう時間がない。
少しでも早く、実用化されない事には――

タイムリミットは迫っていた。
それでもやっと見つけた、未来への足がかりに一縷の望みを託す。


だけど一人でこの先の研究をするには、残された時間が足りない。
その為に彼は、ある学者を捜していた。
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