解ける螺旋
さっきまでは完全に無視してたくせに、結局面白がってからかってるのがわかるから悔しい。


「……本が降ってきて驚いただけです」

「そうなんだ」


必死の嘘もきっとお見通し。
それどころか、意地を張った私へのお仕置きとばかり、樫本先生はもっと私に身体を密着させてくる。
首筋に先生の息がかかる。
服を通していても先生の温もりが感じられて、もう本当に限界だった。


いつも行動の読めない先生の息が掛かる位傍にいて、戸惑ってドキドキする。


なんでこんな事をするんだろう。
なんで私だけなんだろう。
何の特別な感情が無くても、私だけに先生の態度が違うならそれはやっぱり『特別』で。
どういう意味の『特別』なのか理解出来ない。


「ちょっ……! 先生、もう平気ですよね!?
もう離れて下さい! からかってるんでしょう!?
……趣味悪過ぎ……!」


そう言って、どんなに痛がられてもいいから先生を身体を押し退けようとして。
本当は自分の心臓の方が限界で、先生の胸を軽く押して私は自分から遠ざけた。
だけど先生はそんな私の手首を掴むと、さっきよりもずっと身体を近付けて来る。
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