解ける螺旋
最初に会った時にも『妖しい』って思ったその瞳が、今は茶色い柔らかい光を放ちながら、私の心に土足で踏み入って来る。


「『怖い』俺をもっと怖がるか。
それでもまだ俺が気になるか。知りたいか。
……俺もそろそろ変化が欲しかったところだから」


先生が何を提案したのか、私にはわからない。
ただ。
はっきりと目に映った先生の瞳は、やっぱりとても綺麗だったって事だけが認識出来た。


「……!!」


次の瞬間。私の背中に先生の腕が回された。
グッと力が籠って引き寄せられる感覚。
それと同時に、私の唇にさっきと同じ感触が戻って来た。


だけど。


「い、や……っ!!」


さっきみたいに触れて掠るだけのキスじゃない。
もっと強引で獰猛で、言葉も呼吸すらも絡め取る様な深いキス。
さすがに驚いて、一秒先に何が待っているかわからない恐怖に逃げ出したくなる。


なのに。
私はギュッと目を閉じた。


ただ奪われるだけの感覚に、理性すら崩壊しそうになるのを感じながら。
それでも抵抗しない自分に気付いた。


――なんで……!?


「……んっ……」

「ふ……」


私の反応に気付いたのか、先生の息が少しだけ漏れた。


そして――


途端にキスが甘くなる。
< 98 / 301 >

この作品をシェア

pagetop